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【R18】 Begin Again【安室透/降谷零】

第49章 守りたいもの




リラの優しい匂いが、僕の心を落ち着かせる。
思えばずっと僕は独りだった。

母のように慕って、憧れていた女医さんは僕の前から姿を消し
警察学校で出来た仲間は全員星になり
初めて本気で好きになった子は、一番憎む男の元へ去って行った。

リラが唯一、僕のそばにいてくれた。
僕が唯一、弱みを見せることが出来る、なくてはならない存在だ。

そして、リラの歌はいつでも僕を癒してくれた。
この世の何よりも、優しかった。
この歌声を守りたいと心底思った。


「ん…零?」


抱きしめられて寝苦しくなったのか、リラが眩しそうに目を開けた。
そして、後ろから抱きしめる僕を振り返って顔を覗き込むと、心配そうに僕の頬に触れた。


「零…?どうしたの?
悲しいことあった?」


僕の目からこぼれた涙を指で拭い、心底心配そうに僕を見るリラ。

僕はそんなリラの髪を撫で、額にキスを落とすとまたぎゅっと腕の中に閉じ込めた。


「ううん?
悲しいことじゃない。
…嬉しいことがあったんだ」


夢でもいい。
みんなに会えた。
そして、僕がずっと悩んでいることも、相談に乗ってくれた。

これは悲しい涙じゃなくて、嬉しい涙と寂しい涙。

そして僕は、取るべき選択肢を決めた。


「リラ…今日の午後、デートしよう」

「する!!わたしも誘おうと思ってたの!」


リラは嬉しそうに笑ってくれた。
この笑顔を、守りたい。
何としても、守りたいんだ。






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