【R18】 Begin Again【安室透/降谷零】
第7章 君との距離
安室side
リラを乗せて武道館に到着した。
裏手の通用口からスタッフパスを見せて中に入ると、マネージャーの山岸さんがすでに到着していて、控え室に案内をしてくれた。
「バックステージに入ったの初めてです」
そう言いながらキョロキョロと辺りを見渡していると、リラが嬉しそうに笑う。
「安室さんは何でも知ってるから驚かないと思ってた」
「僕にだって、知らないことは沢山ありますよ」
例えば、今君が誰を想っているのか。
僕のことを、どう思っているのか。
自分の気持ちを伝える勇気もないくせに、そんなことを思う。
そんな僕の真意を知るよしもないリラは、完全に仕事モードで、ヘアメイクをしながらスタッフと最終の打ち合わせをしている。
やっぱり、僕が手を出していい子じゃないな。
この子は、みんなのアイドルで、憧れで、太陽だ。
僕の汚れた手で触っていい子じゃない。
安室透なんて、偽名しか教えられない僕が。
メイクが進むにつれ、どんどんアーティストのLilaになって行くリラを見ながら、そう思った。
その時、スタッフの1人が楽屋に慌てて駆け込んできた。
「た、大変です!!」
「どうした?」
山岸さんが首を傾げながらそのスタッフに聞くと、手に持っていた紙を見せながら慌てた様子で言った。
「このライブを中止にしないと、Lilaを殺すと脅迫状が…」
「な、なんだって?!」
山岸さんが声を上げて驚く中、僕はスタッフからその紙をパッととって、内容を確認した。
黒い封筒、差出人は無し
「リラ。
これ、前に探偵事務所で見せてくれたストーカーからの手紙に似ているな」
「…ほんとだ…そっくり。」
と言うことは、ようやくストーカーが動き出したってことか…
もしかしたら、今日この会場に来ているかもしれないな…