【R18】 Begin Again【安室透/降谷零】
第7章 君との距離
安室さんと暮らし始めて3週間目が経過しようとしていた。
あのキスの夜が明けて、目が覚めたら安室さんは何事もなかったかのように朝ごはんを作ってた。
卵、目玉焼きにしますか?スクランブルエッグにしますか?
なんて、そんな取り留めのない話をして、わたしが聞きたいことは聞かせてくれなかった。
そしてしばらく経ったけど、特に何もない。
キスもあれ以来していないし、なんなら安室さんはわたしに触れるのを意識的に避けているようにも思える。
なによ…あんな風にキスして、わたしの思考全部かっさらっておいて、今更距離取らないでよ…
今日も、朝起きてヨーグルトとアサイーボウルを食べながらじっと安室さんを見てそう思った。
安室さんは、わたしのことどう思ってるの?
そう聞きたいのに、聞けない。
「今日は、武道館ですね」
「うん!安室さんも、バックステージに入れるように山岸さんが手配してくれてるよ」
「では、しっかり警護させていただきます」
警護…
そうだよね。
安室さんは、毛利探偵の指示でわたしの警護をしてくれているだけ。
あのキスも、きっと深い意味なんてない。
「リラ…リラ??」
「えっ!なに??」
「…いや、食べ終わったなら、片付けようと…」
「あ、あぁ。ごめん。はい」
慌てて安室さんにボウルを手渡そうとした時、ふ…と安室さんの指に手が触れた。
その瞬間、安室さんはパッと手を離して言う。
「車で送って行きますから、準備出来たら声をかけてください」
「う、うん…」
離された手が、寂しくて思わず俯いてしまう。
ほら、やっぱりあのキスに深い意味なんてないよ…
ライブの前なのに、気持ちが沈む。
はぁ…とため息をついた後、わたしは出かける準備をするために荷造りを始めた。