【R18】 Begin Again【安室透/降谷零】
第48章 都会の光の中で ☆
エレベーター前に立っていた警備員さんに、零がチケットのようなものを見せると、すんなりとエレベーターへ誘導してくれる。
「なに?営業時間外じゃないの?!」
「今日は、僕たちの貸切」
「えっ!貸切って…!嘘!」
突拍子もなさすぎて、戸惑うわたしをよそに、零は余裕な表情でエレベーターがどんどん上へと登っていくのを眺めてる。
「嘘かどうかは、その目で確かめてください?」
その時、エレベーターのベルが チン… と鳴った。
「ほら、着いた」
零がそう言った瞬間、エレベーターのドアが大きく開き、わたしの目に飛び込んできたのは東京のまばゆい宝石みたいな夜景。
「わ…うわぁ!!」
本当に誰もいない展望フロア。
そしてガラス越しに広がる夜景。
わたしは思わず心が躍った。
「すごい!本当に貸切!
あ!ねえ!東都タワーだ!あ、あっちにはトロピカルランドも見えるよ!」
360度、景色が見渡せるフロアを駆け回りながら、まるで小さな子供みたいにはしゃぐわたしを、零は優しい目で笑った。
「お気に召してくれましたか?」
「うん!!そりゃあもう!!
…っごめん、子供みたいにはしゃいじゃって…」
「どうして謝るんだ?
可愛くて、好きだよ」
そんなこと平然と言ってのける零に、ドキッと胸が高鳴る。
わたしは照れ隠しに景色を指差してまた声を上げた。
「あっちは日本武道館だね!」
「ふ…こんなに喜んでくれるとは思ってなかったよ」
「だって、夜に来たの初めてだもん!
前は……一度、お兄ちゃんと零と3人で来たよね?
あの時はお昼だったし、人もたくさんいたし!」
そう言うと、零は外を眺めるわたしの肩に腕を回して自分の方へ抱き寄せた。
「零…?」
「不思議だな。
この宝石みたいな光の中には、何十万人という人がいて、その中でリラに出会えたのはどれほどの奇跡なんだろうな。」
「…奇跡…」
そう。わたしと零が出会ったのは間違いなく奇跡だ。
芸能人、アーティストのわたしと、警察官、しかも公には出来ない公安部の零。
普通に生活していたら、決して交わることのない2人の時間が交差したのは、神様がくれた奇跡だ。
「リラ…こっち向いて?」
「?」
首を傾げながら零の方を向いた。