【R18】 Begin Again【安室透/降谷零】
第48章 都会の光の中で ☆
「今日の収録はどうでしたか?
楽しかった?」
「うーん。楽しかったよ?
ちょっと嫌なこともあったけど」
不意にあの藤さんとのやり取りを思い浮かべてつい口を滑らせたわたしは、慌てて口をつぐんだ。
「?嫌なこと?」
「…あ、でも大したことじゃないの!
…お弁当をね、欲しかったお弁当が取られちゃってそれで」
そんな作り話がペラペラと口から止めどなく出てくるなんて、わたしは卑怯な女だ。
「そう。
じゃあ、その食べられなかったお弁当より美味しいお弁当を、今度僕が作るよ」
そう言って笑う零の顔を見ると、ズキンと良心が痛んだ。
でも、どうせ断るんだもん。あの話は。
わざわざ零に言って、心配かけたり気を遣わせたりしたくない。
わたしの中で消化して、無かったことにしなきゃ。
もうわたしの中の答えは決まっている。
揺らがない。
何度もそう自分に言い聞かせた。
その時、零の運転するRX-7がゆっくりと停車した。
「?どこ?」
窓の外の景色を一切見ていなかったわたしは、どこに停まったのか分からず慌てて外を見た。
すると、目の前に聳え立っているのは6色に光るベルツリータワーだ。
「え…どうしてベルツリータワー?」
なぜここに連れて来られたのか全く理解が出来ずにいるわたしの手を、零が優しく握って引いた。
「行こうか」
「えっ、中に入るの!?」
驚きの声を上げながらも、わたしは零に手を引かれるがままタワーの中に足を踏み入れた。