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【R18】 Begin Again【安室透/降谷零】

第47章 夢を奪う権利 ☆




もしもリラがアメリカに永住することになれば、僕とリラがずっと一緒にいる未来は実現しないまま終わる。

1年、3年、5年なら待てる。
けれど一生、日本とアメリカ…約1万キロ離れた場所にいるのなら、二人が付き合う意味ってなんなんだ…

そんな思考が、全部顔に出ていたんだと思う。
社長はコーヒーを啜りながらため息を吐いた。


「わかってくれたかしら」

「…もしも、それでもリラと別れないと言ったら?
もしも、リラが、アメリカに行くのを断ったら?」


「…日本での歌手活動も、今までのようにはできないと思ってちょうだい」


僕に残された選択肢は、リラをアメリカには行かせない。それだけだった。

けれど今、リラをアメリカに行かせなければ、リラは大好きな歌を日本ですら歌えなくなる。

悪魔のような選択に、どうすれば正解なのか想像すらできない。


「社長、そろそろお時間です」

「仕方ないわね。
リラには一ヶ月待つと伝えてあるわ。
じっくり考えて頂戴」


そう言うと、社長は先程このポアロを貸し切るために300万を支払ったのにも関わらず、律儀にコーヒー代を机の上に置いて席を立った。

そして、ポアロの入り口ドアを開けながら、僕の方へ振り返って静かに口を開く。


「降谷さん。
あなた、リラといて、住む世界が違うと思ったことはない?
ステージの上に立つあの子を見て、遠い存在だと思ったことあるでしょ?
…あの子の夢を邪魔する権利、あなたにないはず。
良い返事を期待しているわ」


そんな残酷な言葉とともに、入り口のドアベルが無情にもカランと鳴った。


リラの夢を邪魔する権利はない

確かにそうだ。

けれど僕は、リラがたとえ一生歌が歌えなくなったとしても、僕のそばにいてほしい。

そんな最低なことを思ってしまった。







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