【R18】 Begin Again【安室透/降谷零】
第47章 夢を奪う権利 ☆
返す言葉が見つからず、頭を整理している僕に、社長は涼しい顔をして隣りにいたスーツの男に目配せをした。
スーツの男は手に持っていた銀色のジュラルミンケースから長方形の紙袋に包まれた何かを取り出し机の上に置いた。
そしてその中身を取り出し、テーブルの上に並べると僕はまた更に目を見開いた。
そこには大量の札束が積まれていた。
「ここに、1000万円あるわ。」
「…?!」
1000万!?
正気か…?この社長…
前に、リラに社長ってどんな人?と尋ねた時、「目的のためには手段を選ばない」そう言っていたことを思い出す。
社長は相変わらず美しい余裕の笑みを浮かべながら僕を見た。
「手切れ金としてこれで手を打ってくれないかしら?
必要なら2000万円でも5000万円でも用意する。
今二人で住んでいるマンションにそのまま住みたいなら、5年分の家賃を前払いしてあげる。
引っ越したいなら、引越し先の準備から全てこちらで面倒を見るわ。
悪い話じゃないでしょ?」
「…お断りします。
僕は、リラと別れる気なんてありません。
今の時代、スマホもネットもある。
数年日本を離れたとしても、気持ちは離れないという自信はありますよ」
そう。
もしリラがアメリカに行くことになっても、毎日電話をすればいい。
顔が見たければビデオ通話だって今の時代、簡単にできる。
距離が離れるだけで、僕たちの気持ちは離れない。
リラと別れるなんて選択肢は僕の中に1ミリもなかった。
そんな僕に、社長は静かに笑った。
「そう。でも、あなたはきっと何年経ってもアメリカには移住できないでしょ?」
「…」
「もしもLilaが向こうで成功して、アメリカに永住するとなったらどうする?
あなたが移り住もうと思うと、今の警察官を辞めないといけない。
あなたの誇りや使命を捨てることはできる?」
そう言われて、僕は呆然とした。