【R18】 Begin Again【安室透/降谷零】
第47章 夢を奪う権利 ☆
「お願いは…単刀直入に言うわね?
リラと別れて頂戴」
「…え?」
言われた言葉の意味を理解するのに、僕にしては珍しく数秒かかった。
目を丸くして何も言えずにいると、社長はふぅ…とため息を吐きながら言う。
「リラから、何も聞いていないのね」
「というのは…?」
何も聞いていない
何のことだ…?
思考を巡らせても、何も心当たりがない僕に、社長がその答えを伝える。
「あの子に、全米デビューの話が来てるの」
「全米…」
「そう。日本を数年離れて、アメリカに活動拠点を移すまたとないチャンス。
もし成功すれば、数多いる世界的アーティストと肩を並べることができる。
普通、アーティストなら大手を振って喜ぶ話よ。
けれど…あの子は迷ってる。
そして、その原因は、降谷零さん。あなた」
ちょっと待って…
リラからは何も聞いていない。
そんな大事なこと、どうして話してくれなかったんだ…
いや、話さなかったんじゃない。
話せなかったんだ。
昨日の夜、リラは僕に尋ねた。
警察官は、海外に旅行できるの?
長期滞在の場合はどうするの?
あまり深く考えていなかったけれど、あの質問もそう言う背景があったのか…
何かあったんだろうとは思っていたけど、僕の予想を遥かに超えていた。