【R18】 Begin Again【安室透/降谷零】
第47章 夢を奪う権利 ☆
そして、性格上律儀にコーヒーを淹れると、それを提供しながら話を振った。
「それで?僕に何の話が?」
「申し遅れました。
私、こういうものです」
そう言って、その女性ではなくスーツの男性が僕に名刺を手渡してきた。
そこに書かれていたのは
「b-xエンタテイメント…
代表取締役社長 音羽 桜子…
まさか…」
「そう。Lilaの事務所の社長の音羽です」
この間、リラが「女帝」と言い表した意味がわかった気がする。
全面に出るセレブ感、美人なのにどこか冷たい雰囲気を持つ女性だったからだ。
「そうでしたか…
まさか、降谷零と言う名前もリラに…?」
「いいえ?調べさせたの。
苦労したわよ。あなたの素性を調べるのは。
どこの情報を見ても該当なしだったから」
「調べさせた…」
僕の情報は、警視庁のデータベースにすら載っていないはずだ。
どうやって調べたんだ…
一体何者なんだ、この社長…
そう思ったのが顔に出たんだろう。
社長はフッと微笑みながらコーヒーに口をつけた。
「芸能事務所の社長をやってるとね、色んなところに顔が利くのよ。良くも悪くもね。」
「…それで、リラの事務所の社長が僕に何の用ですか?」
「あなたにお礼とお願いを伝えたくて来たの」
「お礼と…お願い…?」
提示されたその2択。
社長は優しく微笑んだ後、まず「お礼」の方から話しだした。
「Lilaのこと、いつも支えてくれてるんでしょ?
ありがとう。
あの子、今まであまりいい恋愛をしてこなかったから、久しぶりに会って顔見るとすぐに分かったわよ。
今、良い人と良い恋をしているんだなと。」
「…いえ、そんな。
僕のほうがリラにいつも支えてもらってます」
何の話だ…と身構えていた僕は、拍子抜けしてホッと胸をなでおろした。
そう、最初に社長の口から出たのが「お礼」だったから、油断した。
次に発せられる言葉が、今日の話の本題だったのだから。