【R18】 Begin Again【安室透/降谷零】
第47章 夢を奪う権利 ☆
安室side
いつもどおり、喫茶ポアロには穏やかな時間が流れている。
朝から働きだして、忙しいランチタイムが終わり、今現在ちょうど店内には誰もいない。
あと1時間後にはカフェタイムになる。
そしてその後は、学生の放課後の時間になり、夜になるまでお客様が絶えず基本的に忙しい。
今この時間が、忙しさが一番落ち着く時間帯だ。
そんな、唯一一息つけるときだった
カランコロン
ポアロの入り口が開く音がした。
「いらっしゃいませ」
入り口の方を見ると、スーツを着たガタイの良い男性と、白いジャケットに黒のミニドレス、サングラスにハイヒールを履いたTHEセレブなマダムが店内に入ってきた。
いつもポアロに来るお客様の雰囲気とはぜんぜん違うその姿に、僕は思わず目を見開いた。
「お好きなお席へどうぞ」
そう案内したものの、その女性は席につかずに僕をじっと見ながら言った。
「安室透さん?」
「そうですが…僕になにか?」
「あなたに話があって来たの。
今から時間もらえるかしら?」
サングラスを外すと、その女性の美しい顔が見えた。
誰だ…この人。
こんな目立つ人、一度会ったら覚えているはずだが…
心当たりが全くない僕は、少し戸惑いながら答えた。
「…生憎、後少しでお客様が増える時間帯なので…
17時にシフトが終わるのでその時にまた来ていただけますか?」
「そう…私もこの1時間しか時間がないから、仕方ないわ。
今から1時間、この店を300万円で貸し切らせてくれない?」
そんな突拍子もない提案に、はい。わかりました。とは言えず、さすがの僕も驚きを隠せない。
「いや…それはさすがに…」
「駄目?300万あれば1時間の売上なんてゆうに超えると思うんだけど。
ね?降谷零さん?」
「!?」
なぜ、僕の本名を知っているんだ…
そう思ったのが、まるっきり顔に出たんだと思う。
その女性は僕の方を見ながら微笑むと、ダメ押しで打診する。
「ね?1時間だけだから。いいでしょ?」
「…わかりました。
ここで聞くでもいいですか?」
「ええ。」
僕はポアロの外の看板を「Open」から「Close」に変更すると、ソファーがあるテーブル席にその女性とスーツの男性を案内した。