【R18】 Begin Again【安室透/降谷零】
第47章 夢を奪う権利 ☆
今日は自宅に山岸さんが迎えに来てくれた。
雑誌のインタビューに、新曲のジャケット撮影。
午後からは音楽番組の収録だ。
文字通り、相変わらず忙しい毎日で、十分売れてる!という自覚がある。
これ以上を望まなくても、現状を維持できればいい。
むしろ、事務所をクビになっても、今の時代音楽を届ける手段なんてテレビ以外にいくらでもある。
なんて思うのは初めてかもしれない。
「Lila。あの話、考えた?」
車を運転しながら山岸さんはバックミラー越しにわたしを見た。
「…断ろうと思ってる」
それが、今のわたしの正直な気持ちだった。
「そうか…歌は日本でも歌えるもんな。」
「山岸さん、マネージャーのくせに行くべきだ!って言わないんだね。」
普通は、こんなおいしい話を蹴るなんてもったいない!って言うと思う。
だけど山岸さんはわたしの気持ちを尊重してくれた。
「Lilaが幸せじゃなくなったら、意味がないからね」
幸せ…
そうだよ。わたしの幸せは零とずっと一緒にいること。
零と出会って、何度も実感したの。
あぁ、今わたし、幸せだなって。
だから、この幸せを手放したくない。
車に揺られて窓の外を見ながら、ひたすらに思ってた。
自分は正しい。間違ってない。と
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