【R18】 Begin Again【安室透/降谷零】
第47章 夢を奪う権利 ☆
けれど、リラになにもないと言われると、それ以上は聞けなくなる。
僕にできることは、たった一つしかなくなる。
僕はリラの身体を抱きしめて、ゆっくりと唇を重ねた。
名残惜しそうにそれを離すと、リラの目をじっと見つめながら言う。
「なにか、困ったことがあったらいつでも言って?
飛んでいくから」
「…付き合う前から、そんなこと言ってたよ?零くん」
そう言って、リラはふふっと笑った。
付き合う前から変わらず可愛い笑顔で。
「今日は仕事?」
「うん。音楽番組の収録。零は?」
「僕は一日ポアロの日。
安室透の日だ」
ここ最近、何かとバタバタしていたから安室透だけの日は久しぶりだった。
「そっか。夕食は一緒に食べられる?」
いつになく真剣な顔でそんなことを聞いてくるリラ。
やっぱり変だ。
そう思いながらも、僕は普段通りに接した。
「もちろん。何が食べたい?」
「サンドイッチ!」
「夕食にサンドイッチ??」
「零の作るサンドイッチが食べたい」
そう言って譲らない僕の彼女。
リラが食べたいなら、サンドイッチでも何でも作ってあげたい。
すっかり尽くす男になっているな…僕は。
そう自覚しながらも、それもいいと思っている。
リラが食べたいと言ったサンドイッチを作って、リラが泣きそうになったら抱きしめてやり、リラが楽しい時は一緒にいたい。
リラが幸せそうに笑う理由が、僕でありたい。
僕のその思いは全て、リラのすぐそばにいればこそだった。
そんなことに、気付いていなかったんだ。
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