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【R18】 Begin Again【安室透/降谷零】

第46章 掴みかけた夢 ☆




山岸さんの運転する車が、零の待つ自宅マンションに到着した。


黒のロングドレスのまま車を降りると、山岸さんは気を遣ったように声をかける。


「じっくり考えて…
君にとって、一番いい選択を。」

「…どっちも手に入れたいのは、ワガママなのかな」


女としての幸せと、歌手としての幸せ。
両方を手に入れたいと思うわたしは、強欲なのだろうか。

わたしのその問いに山岸さんは何も答えず、もう一度「じっくり考えて」とだけ言い残して、車が走り去って行った。


マンションのエントランスをくぐり、玄関ドアに手をかけた。

そして、ふぅ…と深呼吸をして、笑わなきゃと口角を上げて元気よく扉を開けた。


「ただいまー!!」


ハイヒールを脱いで足を踏み入れた時、零がリビングから出迎えに来てくれた。


「おかえり…!?ドレスだ…」

「あ、あぁ。高級レストランでの会食だったから、着せられたの。」


自分が黒のドレスを着ていて、零に見せるのが楽しみ。なんて考えていたことも、もうすっかり忘れていた。

零はわたしに近づいて来て、頬に手を添え、わたしの顔を見つめた。

そして、唇にキスを落とすと、髪を撫でながら甘い声で言う。


「綺麗だ」


優しく触れられると、泣きそうになる。
甘い言葉をくれると、もっと欲しくなる。

零と、離れたく無い。ずっと一緒にいたい…

そんな思いが全身を駆け巡って、わたしは思い切り零に抱きついた。


「リラ…?」

「零…このドレス、脱がせて?」

「どうした?何かあった?」


突然、わたしがそんなことを言うのはおかしいと感じたんだろう。
零はわたしの瞳をその綺麗な目で見つめながら、心配そうに頭を撫でた。


「何もない…零の一番近くに行きたいだけ」


一番近くに、一番零を感じられる距離に行きたい。
ただそれだけでぎゅっと抱きつく力を強めたわたしを、零は勢いよく抱き上げた。


そして、わたしの身体を優しくベッドに下ろすと、ドレスの背中にあるファスナーに手をかけた。




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