【R18】 Begin Again【安室透/降谷零】
第46章 掴みかけた夢 ☆
きっとこれを逃せば、チャンスは永遠に巡ってこない。
この業界はそういう世界だ。
チャンスをすかさずモノにできる人間だけが生き残る、厳しい世界。
わかってるけど…
煮え切らない態度のわたしに、社長は諭すように続けた。
「Lila?この話を聞いたら、普通のアーティストなら泣き喚いて喜ぶものよ?
以前まで、あなたもそうだったでしょ?
何があなたを変えたのかしら」
何があなたを変えたのかしら
その言葉が、まるで零と出会ったからわたしは悪い方向に変わってしまった。と言われている気分になり、思わず顔を顰めた。
すぐに答えを出せるはずもないわたしを見て、社長がため息を付きながら言う。
「いいわ。1ヶ月待ってあげる。
それまでに答えをちょうだい。」
そう言って社長はガタンと席を立ち上がり、社長秘書を引き連れてVIPルームを出ようとドアに手をかけた。
そして、言い忘れたことを伝えるみたいにわたしの方を向いて、残酷なことを言う。
「もしも断るなら、日本での活動も出来なくなる可能性があることも、頭に入れておいて。
…それじゃあ」
そう言い残し、社長は私の前から颯爽と立ち去って行った。
ずっと、こんな日が来るんじゃないかと思ってた。
いや、今までもこういうタイミングはたくさんあった。
そのたびに、ずっと零の優しさに甘えてごまかしてきたんだ。
零か、自分の夢か
女としての幸せか、歌手としての成功か
どちらかを選ばなければいけない、選択のときがついに来てしまった。