【R18】 Begin Again【安室透/降谷零】
第6章 First kiss
安室side
リラにキスをした。
暗闇の中で、リラの身体が不可抗力で僕の腕の中に倒れてきた時、身体が勝手にリラを抱きしめていた。
そして、振り解け。なんて気休めを言いながら、リラの唇に自分の唇を重ねた。
その瞬間、ようやく自覚した気がする。
僕は、リラのことが好きなんだと思う。
最初は、歌が上手いアーティストだなとしか思ってなかった。
だけど、一緒に暮らしていると、リラが毎日どれだけ努力しているか、すぐそばで何度も見てきた。
歌が好きで、歌のために身を削って、全てを賭けている。
クールぶっているくせに、すぐに顔を赤くして慌てるところが、芸能人にそぐわなくて、可愛いなと思ったりした。
それに、ふとした瞬間にリラのことを思い出し、気にかけている自分もいる。
そして、リラの口から他の男の名前が出ると、モヤモヤと腹が立つ。
これら全部、リラのことが好きだと仮定すると辻褄が合う。
それを自覚したと共に、僕は怖くなってリラから距離をとった。
このままリラが抵抗しなければ、キス以上のこともしてしまいそうだったし、それに…
リラは表舞台で輝くスター
僕なんかが手を出していい存在じゃない。
この同棲も、期間限定だ。
無事にストーカー事件が解決すれば、僕たちは他人になる。
今まで通り、リラの歌声をラジオやTVで聴いて、きっとそのうちリラは僕を忘れる。
街中の広告なんかで、リラがどんどん綺麗になって行くのを見る、不特定多数のただのファンだ。
またきっと、あの苦しい思いをすることになる。
前はリラの歌声で癒されたけど、今度はリラの歌が街中から聞こえるたびに耳を塞ぐことになる。
これ以上、好きになってはダメだ。
そう自分に言い聞かせて、僕は久しぶりにソファーに寝転がった。
さっきまで、リラがここで寝ていたせいで、甘いチェリーブロッサムの香りがした。