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【R18】 Begin Again【安室透/降谷零】

第45章 4枚の桜のはなびら




零をベッドに寝かせて、寝室のドアを開けたままキッチンに立ったわたし。


わたしがいつも風邪の時に食べている物が食べたい。

そう言われたわたしはお鍋にお出汁を沸かした。

わたしが風邪の時に食べていたのは、卵が入った月見うどん。
と言っても、今の母が作ってくれたものではなく、わたしの本当の母が作ってくれた記憶がある。

わたしが一度風邪をひいた時は、零がお粥作ってくれたな…

こんなふうに、零の味がわたしの味になって、わたしの味が零の味になる。
それが愛しいと思った。

完成した月見うどんと水、風邪薬をトレーに乗せ、寝室へと向かい、眠っている零に声をかけた。


「零ー。出来たよ?食べられる?」

「ん…食べる。ありがとう」


ゆっくりと身体を起こした零。
ベッドに取り付けられるテーブルを用意して、その上にトレーを置いた。


「はい。温かいうちに」


そう言いながら出されたトレーを見て、零がぽつりと呟いた。


「うどん…」

「ごめん…うどん、苦手だった?」

「いや?…嬉しくて」

「え…?」


零の言った、嬉しいの意味がわからなくて首を傾げるわたし。
そんなわたしに、零は優しく笑いながら言った。


「いや…リラが風邪ひいた時はこれ食べてたんだなー。と思ったら、リラの新しい一面を知れた気がして嬉しくて」

「…母が、よく作ってくれたの。
本当の母が。」

「そう…美味しいよ。すごく」


微笑みながらわたしの髪をなでてくれる零。
熱が出ているせいか、零の鼻がすこし赤くなっていて可愛いと思った。

しばらくして零の食事が終わり、薬を飲んだのを見届けるとわたしはキッチンに戻って片付けを始めた。

熱、長引かなければいいな…
明日はわたし朝から仕事だから、看病してあげられない。

こういうとき、今の仕事をしていなければ零のそばでずっと看てあげられたんだろうな…

たまに思う。
零がわたしの歌が好きだと言ってくれているのに甘えているけど、もし零と一緒になる未来があるなら、警察官の妻らしく仕事を辞めて家庭に入ったほうがいいんじゃないかと。

きっといつか、零のそばにいることか、仕事を続けることか
選ばなきゃいけない日が来る気がする。

その時わたしは、どんな選択をするんだろうか…






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