【R18】 Begin Again【安室透/降谷零】
第45章 4枚の桜のはなびら
萩原と最後に交わした言葉すら思い出せないまま、僕のもとに届いたのは殉職したという知らせと葬式の日程連絡。
無事でいてくれと祈る暇さえなかった。
まだあの飄々とした軽いノリで、降谷ちゃんと名前を呼びながら現れそうなのに、萩原の姿はもうこの世のどこにもなかった。
そしてその4年後
萩原の命日の前日に、松田、ヒロ、そして班長と4人で萩原の墓参りに行った。
その後、ちょっとトラブルも合ったりして、久しぶりに4人で暴れたとき、懐かしい…そして心地いい…そう思った。
萩原の志を胸に抱いて、僕たち4人でこの国を守っていくんだと、4人でハイタッチしたときに誓ったのに。
その翌日、松田陣平がこの世からいなくなった。
自分ひとりを犠牲にして、大勢の人間を守り抜いた、今や捜査一課で語り継がれる程の伝説になった松田。
警視総監を殴りたいなんて理由で警察官になったくせに、命を捨ててまで大勢の市民を守るなんて、矛盾してるよ…
松田の墓前の前で、僕は少しも褒めてやる気になれなかった。
ズルい手を使っても、他の何を犠牲にしたとしても、松田に生きていて欲しかったから。
生きていれば、またあの頃みたいに殴り合えたのに。
生きていてさえくれれば、痛みなんて全部受け止めたのに。
それからしばらく時は過ぎて
忘れもしないあの日
「奴らに俺が公安だとバレた…
じゃあな零…」
その次にヒロを見たのは、胸から血を流してぐったりしている姿だった。
駆け寄って、僕は何度も呼びかけた。
スコッチ! と
本当は、ヒロって呼びたかった。
これが彼の名前を呼べる最期の瞬間だとわかってたから。
けれど、僕は冷静に組織のコードネームを使った。
こんな時まで最良の選択を選んでしまう僕自身に、嫌気がさす。
ずっと唯一無二の親友だったヒロが
僕の光でもある諸伏景光が、僕の前から永遠に姿を消した。
探しても探してもどこにも見つけられず、永遠に会えない場所へ行ってしまったことに、果てしない喪失感を覚えた。
多分、今までで一番大きい喪失感を。