【R18】 Begin Again【安室透/降谷零】
第45章 4枚の桜のはなびら
変なやつ。
そう思ったのは、ヒロが喋らないからじゃない。
僕の髪の色も、肌の色も、瞳の色も、
何一つ気にすることなく当たり前のように握手をしてきたからだ。
いつも決まって、ほかの同級生と少し違うこの見た目で判断されてきた。
そんなヒロに、あのときの僕は救われたんだ。
それからヒロとふたりで、また暗闇を走っていた。
走っても走っても、あの大切な女医の姿はどこにも見えなかったけれど、ヒロと一緒なら暗闇も全く怖くなかった。
そして僕は、いつしか立派な大人になっていた。
大人になった僕がヒロとふたりで飛び込んだ先で待っていたのは
「スカした顔しやがって気に入らねえ」
そう言いながら僕を睨む松田陣平
「降谷ちゃん。今度、合コンしねえ?
俺と降谷ちゃんがいれば、俺達の圧勝よ」
笑いながら僕の肩を抱くのは松田の親友、萩原研二
「この間の試験、また降谷に負けたな。
だが、剣道は負けないぞ」
大人びた表情で僕たちをまとめる班長こと伊達航
そして、ヒロ
警察学校の半年間を、この5人で過ごした。
楽しかったことも、苦しかったことも、振り返れば全部、5人でいた。
まるで桜の花びらのように、5人でやっと一人前だった。
僕はずっと独りだったけれど、ヒロと出会って、そして松田、萩原、班長と出会って、僕の居場所はこの輪の中なのかもしれない。
そう思うと、寒かった心があったかくなる気がした。
だけど
5人のうち、最初に暗闇に消えたのは萩原だ。