【R18】 Begin Again【安室透/降谷零】
第44章 ラスボスとの初対面
そして、タクシー乗り場の前で2人きりになった僕に、突然リラの父が真剣な眼差しで僕の名前を呼んだ。
「降谷くん」
「はい?」
名前を呼ばれて反射的に返事をした僕に、リラの父は深々と頭を下げて言った。
「娘をよろしく頼みます」
自分の好きな女性の父親から、こんなことを言われるのはこんなにも嬉しくて、こんなにも身が引き締まる思いだったのか…
そう実感しながら、僕は決意も込めて返事をした。
「もちろんです」
そう言うと、リラの父は顔を上げて僕の目をまっすぐに見ながら言った。
「…君に頼みがある。
もしもこの先、リラが幸せの種類を選択しなければいけない時が来たら、その時は、後悔のないよう君が導いてやってくれ」
「幸せの種類…」
「そう。例えば、歌手としての成功か、女としての幸せか、どちらかを選ばなければいけない時が来るかも知れない。
未来を見据えて、冷静に判断できるよう、あの子の支えになってくれると嬉しい」
そう言うリラの父の表情は、出会ってから一番真剣な顔をしていた。
まるで、それだけを伝えにイギリスから日本に来たかのように。
「はい。…必ず」
「うん。ありがとう。」
父からの言葉の重みを噛み締めながら首を縦に振ると、リラの父はまたふわりと笑った。
笑い方がリラと似ていると感じた。
そのとき
「時計、あったよー!」
無事に父の忘れ物を見つけたリラは、それを高らかに上げながら僕たちの元に走って来た。
「おー!それだよ!ありがとうー!」
さっきの真剣な表情とは打って変わって、またニコニコスマイルを見せるリラの父。