【R18】 Begin Again【安室透/降谷零】
第44章 ラスボスとの初対面
リラは僕たちを交互に見て首を傾げた。
「2人で何話してたの?」
「えっと…」
なんて言おうか。と一瞬言葉選びを迷っていると、リラ父がすかさずウインクをしながら笑った。
「パパと零くんの秘密だよ」
「そう、秘密」
「えー!なにそれ!気になるじゃない!」
リラが口を尖らせたとき、タイミングよくリラの父が呼んだタクシーがマンション前に到着した。
「じゃあな、リラ。
仕事、頑張れよ!」
「はいはいー。またね」
そう言葉を交わすと、タクシーは空港に向けて走り去って行った。
「…で、お父さんと何話してたの?」
「内緒です」
「…教えてくれないの?」
内緒と言われるとさらに知りたくなるリラは、得意のうるうる攻撃で僕の目を見つめて来た。
「…っ。卑怯だ…」
「教えて?」
「…リラの事よろしくって話」
「えー?それだけ?」
「それだけ。
ほら、一度家に帰って、一緒にランニングにでも行こう?」
嘘は言っていない。と、開き直る僕は、未だ納得していないような顔をするリラの手を引いて自宅へと向かった。
歌手としての成功か、女としての幸せか
どちらを選ぶ時が来るかも知れない。
そんな遠い未来だと思えた話は、予想以上に早く、僕達の前に立ちはだかることになる。
この時の僕は知らなかった。
リラの父がこの時言った、「導く」ということの難しさも、苦しさも、困難さも
どちらかを選ぶと言うことは、片方を捨てなければならないと言うこと。
そんな簡単な方程式を、想像すらしてなかったんだ。
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