【R18】 Begin Again【安室透/降谷零】
第6章 First kiss
ヒロ…
一瞬、僕の脳裏に彼の顔が浮かんだ。
僕の幼馴染で、警察学校の同期で、
大事な唯一無二の友人…だった男
赤井との因縁の所以になっている男…
だけど、きっと今リラの口から漏れた名前は、別の男のことだ。
スコッチとリラが知り合いなわけないし。
誰だろう。
前に付き合っていた彼氏か?
そう思うと、僕の胸の奥からフツフツと何かモヤモヤしたものが湧き上がる。
「…ヒロって、誰ですか」
そう言いながら、僕は眠るリラの頬を撫でた。
そして、眠っているのをいいことにゆっくりとリラの顔に自分の顔を近づけて行く。
「リラ…」
ダメだ。やめないと。
…頼むから、起きて僕を拒絶してくれ…
だけど、起きないでほしい…
そんな矛盾だらけの気持ちのまま、ゆっくりとリラの唇に自分の唇を重ねようとした時
「ん…」
リラが眉を顰めながら、ゆっくりと目を開けた。
そして、唇を重ねる寸前、間近にある僕の瞳と目が合う。
「え……安室…さん?」
「……」
驚きながら目を見開いて、僕を戸惑いながら凝視した。
そして何も話さない僕に痺れを切らしてもう一度尋ねる。
「ど…したの?」
「…ヒロって、誰?」
唐突にそんなことを聞かれたリラは、少し考えた後に言った。
「…わたしの、好きな人」
その言葉を聞いて、また僕の胸の奥がモヤモヤする。
何だよ…この気持ち。
前にも経験したことがある。
あれは、赤井とあの子が好き合っていると気付いた時。
そんなことを考える僕の顔を見て、リラがじっと僕の目を見ながら言った。
「…どうして、そんな顔するの…?」