【R18】 Begin Again【安室透/降谷零】
第44章 ラスボスとの初対面
安室side
どうして、こんなことに…
このセリフを頭の中で自問自答したのはもう何度目だろうか。
僕は目の前にいるリラの父を見ながら、今自分が置かれている状況を、冷製に分析する。
ここは湯船の中。
右端には僕が、そして左端にはリラの父。
向かい合って一緒のバスタブに入ると言う奇妙すぎる光景は、リラの兄と風呂に入って以来だ。
どうして雨宮家の男は、一緒に風呂に入りたがるんだ…!?
思えば兄の時は、リラが無理矢理風呂に入るよう仕向けたせいで、リラ兄も僕も全く乗り気じゃなかった。
けれど、父に至っては、僕を眺めてニコニコと微笑みかけてくる。
やりづらい…この上なく…
この、ニコニコ笑って腹の中をなかなか見せないところ、自分と通じるものがあって、少し嫌だ。
同族嫌悪というものだろうか。
しかも、同じバスタブに浸かったはいいものの、全くと言って良いほど会話が浮かんでこない。
「お父さんは、お仕事は何を?」
考えて考えて絞り出したその問いを言葉にした時、僕はしまったと思った。
以前、リラの兄にお兄さん?と呼んだときに、俺はお前の兄貴じゃないと一蹴されたのを思い出したからだ。
俺は君の父じゃない。
と返される…と思った僕だけど、そんな予想を簡単に裏切ってくる。
「嬉しいなあ。お父さんって呼んでくれるのかい?」
まさかのウェルカム状態に、僕は呆気に取られて目を丸くした。
そして、リラの父は、先ほどの僕の問いに答えた。
「仕事は、美術大学の教授をやってるんだ。」
「へぇ…すごいですね」
母は敏腕国際弁護士
父は美術大学の教授
兄は外資系の国際線パイロット
そしてリラは日本を代表する歌姫