【R18】 Begin Again【安室透/降谷零】
第44章 ラスボスとの初対面
父は、昔からそうだった。
基本的に平和主義者
誰かに怒ったところなんて見たことない。
ほんわかしていて、飄々としていて、楽観的。
母とは正反対で、他人から好かれるのが父で、他人から尊敬されるのが母だった。
そんな2人は、性格の不一致で離婚に至った。
離婚してからは一度も会っていないらしい。
父と兄はたまに食事をしたり、今でも交流はあるみたいだけど。
そりゃそうだ。本当の親子なんだから。
かたやわたしは、父と会ったのは5年ぶりぐらいじゃないかな。
血は繋がっていないけど、わたしに愛情をたくさん注いでくれたのは間違いない。
きっと、少し前までなら、どうせ本当の父じゃないから。
なんて心のどこかで思っていただろう。
でも今は、零が手を引いてくれたおかげで実現したあのお墓参り以来、ちゃんとこの人たちに甘えてあげれば良かったと後悔すら覚えてる。
「ねぇ、お父さん」
「んー?」
キッチンで隣同士に並び、カチャカチャとコーヒーカップを洗う父を呼んだ。
「わたしのこと、本当の娘みたいに育ててくれて、ありがとね」
「…何を言ってるんだ。本当の娘みたい。じゃない。
お前は俺の娘だよ。」
「…ん。ありがと」
照れ臭くて、ふいっと顔を少し隠しながらも、内心はすごく嬉しかった。
家族とのわだかまりが溶けたのも、みんな全部零のおかげだ。
洗い物が終わるタイミングで、お風呂の準備をしていた零がLDKに戻ってきた。
「お風呂の準備ができたので、お先にどうぞ」
そう言われたわたしの父は、零の肩をガシッと抱きながら白い歯を見せてニカッと笑った。
「さて!じゃあ行こうか!零くん!」
「?はい?」
どこへ??と言わんばかりに、首を傾げる零の肩をグッと抱きながら、父はウインクをして言う。
「ハダカの付き合いってやつさ。
一緒に風呂に入ろう」
「え!?!」
「HAHAHA!さあ行こう!積もる話もあるしなあ!」
父は強引に零の肩を抱きながら、そのまま零の身体は浴室へと連行されていった。
「いってらっしゃーい…」
あの父のペースに巻き込まれて大丈夫かな…零…
若干心配に思いながらも、どこか他人事のわたしは、そのままソファーをベッドにする作業を開始した。
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