【R18】 Begin Again【安室透/降谷零】
第42章 探偵ごっこ
まるで映画のワンシーンのような別れに、わたしは思わず見惚れてしまいながら、ハッとして首を横に振る。
「良かった…無事何事もなくデートは終了…
つかれた…」
「お疲れ」
「…藤さん、もう帰っていいですよ」
1日付き合わせたくせに、しっしと藤さんを追い払おうとするわたしを見て、藤さんはフッと笑った。
「あんたさ、俺があんたに告白したこと、もう忘れてない?」
そう言うと、わたしの肩を抱き寄せて顔を近づけてくる藤さん。
「えっ…ちょ…」
「一日付き合った御礼ぐらいくれよ」
そう言いながら、藤さんの唇がだんだんわたしの唇に近づいてきた。
この状況を理解するのにしばらくかかったわたしがハッとやばいことに気づいたのは唇が重なる寸前。
散々零のこと尾行してたくせに、わたしが藤さんとキスなんてしたら、本末転倒じゃない!
と、それを慌てて拒否しようとした瞬間
「ストップ」
その声とともに、わたしと藤さんの間に誰かの手が挟まれてキスを阻止した。
ハッと見るとそこにいたのは零。
ジロ…と藤さんを睨みながら言う。
「僕のリラに、手を出すのはやめてもらえますか?」
「やっぱ、気付いてたか」
2人が睨み合う間でひとりオロオロしながら、状況が全然把握できていないわたし。
えっ!?どういうこと!?
気付いてたって、わたしが尾行してたのに気付いてたの?!
そんな顔して2人を見ると、藤さんはフッと笑いながら言う。
「しょうがない。唇は諦めてやるよ」
「唇は?」
その言い方に引っかかったわたしの手を取り、藤さんはまさかのわたしの手の甲にキスをした。
「!!!?」
「なっ…!!」
唇へのキスを阻止して油断していた零は、藤さんの行動に眼の色を変えて睨んだ。
「じゃあ、俺帰るわ。
今日は楽しかったよ。またなLila」
「またはないですから!」
ヒラヒラと手を振りながら上機嫌に去っていく藤さんを見送りながら、零が怒る声が響いた。