【R18】 Begin Again【安室透/降谷零】
第42章 探偵ごっこ
そして、走りながら急いでスマホをタップして、110に通報する。
「もしもし?女性が襲われています。
場所は…」
まだそうと決まったわけではないが、こうでも言わないと警察は動かない。
万が一に備えて警察を呼んだ僕はエレベーターに飛び乗ると、6階のボタンを押して上に上に上がっていくのを眺めながら考える。
帰りに尾行した限りでは、小鳥遊の周りに怪しい人物は見当たらなかった。
それに、小鳥遊がエントランスをくぐったあと、新しくそこに入った人物は1人もいない。
つまり、何時間もマンションの中で息を潜めて小鳥遊が帰ってくるのを待ってたのか…
ストーカーという人種の異常さをひしひしと感じながら、エレベーターは6階に到着。
小鳥遊の部屋の前で、インターフォンを連打する怪しい人物を視界にとらえた。
その人物に近付くと、インターフォンを押す手をグッと掴み、捻り上げながら言う。
「警察だ。
小鳥遊につきまとっていたのはあなたですか」
警察手帳を見せながらそう聞くと、帽子を目深に被った男は慌てて逃走しようとしたが、すぐにその男の手を後ろで掴み、逃げられなくした。
そうしているうちに、交番の警察官が到着。
男はストーカー加害者として、連行されていった。
とりあえず犯人が捕まったことを伝えようと、僕は小鳥遊の部屋のドアをノックする。
コンコンッ
「小鳥遊?大丈夫か?」
かちゃかちゃ…ガチャ…
チェーンロックを外し、玄関の鍵を開けた音がしたあと、ゆっくりと扉が開いた。
「先輩…」
「犯人、捕まったよ。
今警察に連行されて行った」
「っ…先輩っ…」
わっと取り乱した小鳥遊は、僕の身体にしがみついてきた。
相当怖かったんだろうな…
思わず、その頭を撫でながら、小鳥遊が落ち着くのを待っていると、鼻を啜りながら小鳥遊が口を開いた。
「…降谷先輩のおかげです」
「…安室です」
冷静に偽名で訂正する僕。
小鳥遊はそんな僕の目をじっと見つめながらぽつりとこぼした。