【R18】 Begin Again【安室透/降谷零】
第6章 First kiss
安室side
RX-7が赤信号で停車しているとき、僕は急いでリラに電話をかけた。
電話越しで聞こえてくるリラの声が、相変わらず耳触りが良くて、ついドキッと心臓が跳ねる。
今日は急遽、例の組織との仕事が入った。
恐らく夜まで駆り出されることになるから、事前に連絡を入れておかないと。
僕がいない間に危ない目に遭わないといいが…
そう思いながら、リラに色々と注意事項を伝えると、リラが少し笑いながら
「…なんか、留守番する子供の気分だよ…」
と言った。
子供…か。
まあ確かに、リラは僕の6つ下だもんな。
子供とまではいかないけれど、妹とでも思っているんだろうか。
…だけど、前の彼女はリラの一つ上。
あの子のことは一度も妹なんて思ったことなかった。
なのに、リラは妹として見ているのか。僕は。
リラとの電話を切った後、助手席にいたベルモットが僕に笑いかける。
「あら。恋人に電話でもしてたの?」
「まさか。恋人じゃありませんよ。
同居人です」
そうだ。同居人。
期間限定で一緒にいるだけだ。
「ルームシェア?」
「まぁ、そんなところです」
そう言うと、ベルモットは細いタバコに火をつけ、フッと煙を吐いた。
「まぁいいわ。早く行きましょう。
ジンが待ってる。
遅れるとしつこく理由を聞かれるから面倒なのよ」
ベルモットはそう言って、スピードを上げろと指示を出す。
僕は偉そうにリラのボディーガードのようなことをしているけど、ストーカーより僕の方がタチが悪いと思う。
潜入捜査とはいえ、こんな極悪非道の組織の一員なのだから。
リラには、関わらせないようにしないと。
リラに見せるのは、3つの顔のうち、ひとつでいい。
偽物の、安室透だけでいい。
降谷零も、バーボンもどちらも見せる気はない。
…嘘を、つき続けなければいけない。
そう思いながら、僕はベルモットを乗せ、ジンが待っていると言う運河沿いの倉庫街へと車を走らせた。