【R18】 Begin Again【安室透/降谷零】
第41章 降谷先輩 ☆
安室side
小鳥遊を連れて、自宅マンションに着いた。
マンションのエントランスの豪華さに、はぁーと口を開けてあたりを見渡す小鳥遊。
「すごく…高そうなマンション…」
「行きますよ。エレベーターはこっちです」
彼女が芸能人とは伝えていない。
Lilaのこと、知っていないという低い確率に掛けたんだ。
知らないなら知らないまま、ただの僕の彼女として1日をやり過ごした方がいいと考えたからだ。
僕たちを乗せたエレベーターは、自宅があるフロアに到着。
鍵を開けて中に招き入れると、小鳥遊はペコリと頭を下げて中に入ってきた。
「おじゃまします」
「どうぞ」
キョロキョロとあたりを見渡した小鳥遊は、僕の恋人の姿が見当たらないのに気づく。
「あの、先輩の彼女さんにも挨拶をしたいんですけど…」
「あぁ。彼女は少し遅くなるから。」
「へえ。お仕事ですか?
何の仕事されてるんですか?」
「内緒。」
ごまかすように笑ってそう言うと、小鳥遊は僕の目をじっと見つめながら言った。
「先輩は、変わらないですね」
「高校時代からもう10年も経ったんだ。
僕は来年30歳。変わったよ」
「ううん。全然変わらない、私が好きだったあの頃のまんまです」
そう言いながら、小鳥遊は一歩、一歩と僕の方へ近づいてくる。
そして僕の手を取ると何かを言いかけた。
その時
「ただいまー!これ、収録の差し入れたくさん持って帰ってきたよ…」
帰宅したリラがリビングのドアを開けるが、僕たちを見てこの異様な雰囲気を感じ取ったらしい。
語尾が消えていきながら、僕たちを凝視する。
僕はとっさに握られた小鳥遊の手を振り解いた。
「おかえり」
「えっと…その方が…」
小鳥遊の方を見て首を傾げるリラに、僕は彼女を紹介した。
「あぁ。僕の依頼人の小鳥遊さん。」
「はじめまして。小鳥遊です。
降谷先輩とは高校時代の知り合いで」
そう言ってふんわりと微笑む小鳥遊に、リラはニコリとアイドルスマイルで笑いながら返す。
「知ってます。零に聞きましたから」
何となく、2人の間にバチバチと火花が飛び散っているのが見えた気がした。