【R18】 Begin Again【安室透/降谷零】
第41章 降谷先輩 ☆
そう切り出した僕に、小鳥遊はとても言いづらそうに下を向きながら本題を話し始めた。
「…無理を承知でお願いなんですが、今日一日、先輩の家に泊めていただけないでしょうか?」
「…それは、何か理由が?」
「実は、家の鍵を落としてしまいまして…
管理会社に連絡したら対応は明日になると言われて。
今日一日だけでいいんです。
…他に頼れる人がいなくて」
そう言いながら眉を下げ、うるうるとした目で見つめられると、邪険に出来なくて困る。
とは言えさすがにリラと一緒に暮らしている家に、女の子を持ち帰るのはな…
流石に二つ返事でOKは出来ず、代替案を提示した。
「生憎ですが、僕は一人暮らしではないから…
お金を貸すので、ホテルに泊まってはどうです?」
「知らない場所に一人で泊まるのが、ちょっと怖くて…」
まあ、本当にストーカー被害に遭っているのだとしたら、そりゃそうか…
困ったな…
一応依頼人だし…でも、依頼人のためにそこまでするか?普通…
うーんと考えを巡らせていると、ダメ押しの一発を小鳥遊が繰り出す。
「…やっぱり、ダメですよね…」
何だかこの状況、何故か僕が悪いことをしているみたいな気分になって、いたたまれない。
良心の呵責に耐えかねて、僕は渋々了承した。
「…彼女に聞いてみるよ。」
「彼女?」
「あぁ。同棲してるんだ。恋人と」
「…恋人、いたんですね…」
何となく、声のトーンがほんの少しだけ低くなったような気がした。
恋人、いちゃいけないのか?
と、心の中で反論しながらも声には出さず、僕はその場でリラに電話をかけた。