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【R18】 Begin Again【安室透/降谷零】

第41章 降谷先輩 ☆




そして、彼女の送迎用のタクシーを電話で呼び、到着するまでポアロの店内で暇を潰していると、僕を見て彼女が意味深なことを言い出した。


「…変わってないですね。
誰かを助けることに、一生懸命なところ」

「…え?」


まるで僕を知っているかのような言い草に、思わず目を丸くして彼女を見た。


「降谷先輩…ですよね?
私のこと、覚えていませんか?」

「…」


正直全く覚えていない。
降谷先輩と呼ぶと言うことは、学生時代の知り合いか…?

もう10年以上も昔の記憶を必死に辿っていると、痺れを切らした彼女が答えをくれる。


「高校の卒業式の日、降谷先輩に告白して、振られたひとつ下の…」


そこまで言われ、やっと思い出した。
高校の卒業式の日に、何人かから告白されたそのうちの1人だということを。


「あぁ!」

「小鳥遊って珍しい名字なのに、それでも覚えてもらえてないなんて、ちょっとショック」

「す、すみません…」

「仕方ないです。降谷先輩、すごくモテてたから…告白なんてたくさんされただろうし。
…どうして、偽名を使ってるんですか?」

「探偵業をやるときは安室透という名前を使ってるんだ。
職業柄、本名はあまり表に出したくなくて、芸名みたいなものかな
だから、安室透の名前で呼んでもらえると助かる」

「はい!安室先輩。
しばらく、お世話になりますね」


ちょうどその時、タクシーが到着し、彼女はそれに乗り込んだ。


「安室先輩。
…短い間ですが、よろしくお願いします」

「こちらこそ。
じゃあ、おやすみ」


そう言って、彼女を乗せたタクシーが走り去るのを見送った。

そして同時に高校の卒業式を思い出す。

あの日は、確か式の前に同級生に告白され、
式が終わって写真を撮るときに別の同級生に告白され、そして帰り際に別の下級生の子に告白され、1番最後に告白してきたのがあの小鳥遊だった。

…どの子も、全く顔が思い出せない…

あの頃は、警察官になる夢しか頭に無くて、断りまくっていたからな…

けれど、ひょんなことから降谷零と安室透の二つの名前を知る人間が増えてしまった。

これは、しばらく色々と用心しなければな…

そんなことを考えながら、僕はリラに今から帰るとLINEを入れたあと、ポアロの店のシャッターを閉めて帰路に着いた。




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