【R18】 Begin Again【安室透/降谷零】
第40章 わたしの恋人は
「失礼しました。」
そう言ってプロデューサーの楽屋を出て、ふうっと思わず息を吐いた。
プロデューサーは怒ってはいたけれど、無理に話題性を作ろうとわたしたちの気持ちを無視したプロモーションを行ったことを、少し後ろめたくも思っていたらしい。
それに、もうさっきのわたしの演説はライブ配信で全国に流れてしまったから、今更怒ったところでどうにもならない。と、しぶしぶ許してくれた。
「じゃあ、帰ろうか。」
「うん。そうだね」
山岸さんの車で自宅まで送ってもらおうと、わたしたちはイベント会場の裏口から外に出た。
出口付近には、噂を聞きつけた大勢の記者が張り込んでいる。
こんなに大勢記者が待ち伏せているのは、歌声を失ったあの時以来かもしれない。
が、わたしがその記者の群勢のさらに向こうに見たものは
白い、RX-7
「零…」
零の車を見つけたわたしは、慌てて零に着信を飛ばした。
すると、ワンコールで受話器が上がる音がする。
「もしもし?リラ?」
「零!もしかして、今イベント会場出たところに車停めてる?」
「あぁ。リラを迎えにきた」
その言葉に、わたしの胸はきゅんと軋んだ。
性懲りも無く、零のことどれだけ好きなのわたし…
そんな自分に呆れながらも、ハッと本来の問題に立ち返ったわたしは、零に警告する。
「記者がたくさんいるの…!
零、顔あまり晒されるのだめでしょ?
送迎は山岸さんにお願いするから…」
「心配ないですよ」
その一言とともに、RX-7の運転席のドアが開いた。
そして、サングラスをかけた零が車から降りて来て、大勢いる記者をかき分けて、わたしの腕を掴んだ。
「零…」