【R18】 Begin Again【安室透/降谷零】
第2章 運命を信じる?
エンジンをふかし、しばらく路上を走っていると、流れてくるラジオがまた耳に飛び込んでくる。
[お送りしたのは、Lilaさんカバーで
Ben E. King - Stand By Me でした。
さてここからはLilaさんにリスナーからのお便りを読んでもらいます]
「はーい。」
さっきの歌を歌っていたとされる女性の声が聞こえてきた。
話し声も、歌声と同じ透き通るような綺麗な声。
高いのに、尖っていなくて、ふわりとしているのに耳にキレイに入ってくる。
そんな不思議な声だ。
「ラジオネーム、怪盗キッドラブ!さんからいただきました。
Lilaさんは、運命を信じますか?
最近大好きだった彼氏に振られて落ち込んでいます。
彼は運命の人だったと思っていたのに…
うーん…なるほど。」
そのメッセージの内容は、まるで今の僕の現状と同じで、
おいおい。すごいタイミングだな。と思いながら聞いた。
[運命、信じますか?Lilaさん]
パーソナリティが改めてそう聞くと、Lilaと呼ばれた女性は凛とした声で答えた。
「信じません」
思わず、僕はラジオの方を見た。
その子は同じように凛とした声で続ける。
「運命って、結果論でしょ?
だって、もしかしたら次の日、めちゃくちゃタイプな人と街で偶然知り合うかもしれないし。
結婚しても離婚するかもしれないし、死別するかもしれない。
結局、この人が運命の相手だったんだってわかるのって死ぬときじゃない?
だからわたしは、今まで一度も運命を感じたことないです」
はっきりとそう言いきった。
僕がさっき、
彼女にとって、僕は運命の人じゃないとわかってる。
そう思ったけれど、たしかにそれも結果論だな。
そう思うと妙に気持ちが軽くなった。
Lilaか…変なアーティストだな
普通、
「運命は信じます!
わたしが今こうやってる歌えてるのは運命だと思う!」
とか言わない?
言わないか…。
自分の中で一人ツッコミを入れながら、僕は車を走らせて誰も待っていない自宅に帰った。