【R18】 Begin Again【安室透/降谷零】
第2章 運命を信じる?
安室side
「もう、君の涙は拭ってやれない」
そう言って、僕は一番好きな人を手放した。
そして彼女は、僕が一番憎い男の元に戻って行った。
君にとって、僕は運命の人じゃなかった。
それは付き合っている時から痛いほどわかっていたはずだったのに。
今の僕の心は空っぽで、ちゃんとわかりやすく傷付いているみたいだ。
つい数時間前まではまだ彼女がいた助手席。
今はもう誰もいないそこを見ながら、僕は泣いた。
こんなに辛いなら、好きにならなければ良かった。
彼女を好きだった日々すら後悔してしまいそうな自分が嫌になる。
昨日まで、僕の腕の中にいたのに…
彼女の笑った顔と、最後の泣いた顔を思い出すと、また違う涙が溢れた。
そのとき、ラジオからある曲が流れてきた。
スタンドバイミー
今日の最後のデートで、彼女と一緒に聴いた曲だ。
綺麗なハイトーンの女性ボーカルのカバーが、妙に頭に入ってくる。
少しだけ寂しそうに stand by me(そばにいて) と歌うその声が、まるで今の自分の気持を歌っているようで、また胸が詰まる。
歌が終わる頃には、涙は止まっていた。
久しぶりだな。こんなに泣いたのは。
というか、最後に泣いたのはいつだったか、ほとんど思い出せない。
帰ろうか…
そう思って、路肩に止めていた愛車のサイドブレーキを下ろした。