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【R18】 Begin Again【安室透/降谷零】

第5章 背中に触れた時




僕は思わず勢いよく身体を起こし、そのままリラに馬乗りになるような形で覆い被さった。


リラは驚いて僕を見た。


ドクン…ドクンと心臓が鳴る。
自分から、僕の理性をくすぐっておいて、そんな顔しないでくれよ…


「…男って、どういう生き物か知っていますか?」

「…知らない。そういう経験、ないもん…」


リラはそう言ってふいっと横を向いた。

経験ないって…
本気か?
だって、少し前に彼氏に振られたと言っていたし、今までたくさん恋をして曲を書いてきたんじゃないのか…?


そう困惑しながら、僕はリラに諭すように言う。


「…男は、好きじゃない女の子とでも、出来るんですよ。覚えておいた方がいい」

「…安室さんも、そうなの?」


じっと目を見られて、そう聞いて来るリラ。

そうだよ。
現に今、こうして君を押し倒しているだろ?
好きでもない、君を
好きでもない…


「…そうだと言ったら、どうしますか?
僕を、拒絶する?それとも受け入れる?」


ずるい問いに、リラの瞳が揺れる。

頼むから、拒絶してくれ…
なんなら、即答で嫌だと言ってくれ

そう思っているのに、リラは迷っているように下を向いた。

どうして、迷うんだよ…
好きでもない男に押し倒されたら、もっと抵抗するべきだ。


「……なんてね」


心の中でそんな説教をしながら、リラが答えを出す前に、思わずはぐらかしてしまった。


リラが首を縦に振ったら、それこそどうすればいいかわからなくなっていたから。


「冗談ですよ。でも、男は狼ばかりなので、くれぐれも用心してくださいね」


まるで子供に言い聞かせるみたいに頭をぽんぽん撫でながらそう言って、また僕はくるっと横を向いた。


掴んだリラの腕は、信じられないぐらい細かった。
押し倒した時のリラの瞳が僕の心を惑わす。

そして、鼻をくすぐるチェリーブロッサムの香り。


どうかしてるな…


頭をくしゃ…と掻きながら、僕は目を閉じた。



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