【R18】 Begin Again【安室透/降谷零】
第38章 零じゃなきゃ ☆
シートベルトをして、出発かな?と思いながら前を見た時、藤さんがハンドルに手をかけて言う。
「元気ないな。何かあったか?」
「…別に何も?」
自分の今の心情を見抜かれていた事に心底驚きながらも、わたしはかろうじて否定した。
そんなわたしに、藤さんは的確に要点を突いてくる。
「どうせ、あのイケメン彼氏と喧嘩でもしたんだろ。
…だから恋愛なんてくだらないんだよ」
「…喧嘩というか、怒らせちゃったんです…」
「じゃあ謝れば?100%あんたが悪いんなら」
100%わたしが悪いか?と聞かれたら、それは違うと思う。
違うからこそ、どうすればこのモヤモヤした状況から抜け出せるのかがわからない。
藤さんに、こんな話をしても仕方ないのに、わたしはただ誰かに話を聞いて欲しくて、気付くと本音を溢していた。
「…わたしは、零が大好きで、世界で一番大切なのに、うまく伝わらない。
この仕事をしていたら、零のこと、傷つけてばっかり。」
「…くだらないな。」
藤さんはため息をついてわたしを見た。
「どうせ、くだらないですよ。」
強がってそう言うわたしの頭を藤さんの手がわしゃわしゃとぶっきらぼうに撫でる。
そして、わたしの目を見てこう言った。
「くだらないから、俺にすれば?」
「え?」
「俺にしとけよ。」