【R18】 Begin Again【安室透/降谷零】
第38章 零じゃなきゃ ☆
どことなく集中できないまま、朝から雑誌のインタビューにファッション誌の撮影。
夕方からは音楽番組の収録。
ようやく今日の仕事を全て終えたわたしは、テレビ局を出ながらスマホを確認する。
零からの連絡は、何もなかった。
わたしから連絡した方がいいのかな。
だけどもし、無視されたりしたら…
自分が傷つくのが怖くて、今から帰るね。の連絡すら送れないでいた。
「はぁ…」
エレベーターの中で大きくため息をついた瞬間、エレベーターのドアが開き、人が乗ってきた。
「あ。」
「あ。 …ふ、藤さん。」
乗ってきたのは、藤亜蘭。
零とのモメごとの原因はある意味この人だったりする。
「あんたも収録?」
「あ、はい。
ミュージックラバーズの…
藤さんは?」
「俺はバラエティ。次の新曲の宣伝のために」
「あぁ。ナルホド…」
「…出口まで、一緒に行くか」
「そ、そうですね」
エレベーターを出ると、出口まで一直線。
同じエレベーターに乗った手前、降りて別れるのもそれはそれで気まずいので、わたしたちは局の出口まで一緒に向かうことになった。
「うわ。すっげぇ雨」
「えっ!?」
外に出ると、土砂降りの雨が地面を激しく叩いていた。
「タクシー捕まえないと…」
そう言ってタクシー乗り場を見ると、急な雨ということもあり、長蛇の列が出来ている。
傘すら持っていないわたしは、雨の中この列に並ぶのはちょっとつらい。
「…俺、車だけど乗って行くか?」
「いいんですか?」
「あぁ。」
「じゃあ、お言葉に甘えて…」
流石にここは藤さんのご厚意に甘えることにして、わたしは駐車場に停めていた藤さんの車に乗り込んだ。