【R18】 Begin Again【安室透/降谷零】
第38章 零じゃなきゃ ☆
掃いて捨てるほど…
そんな風にリラのことを軽く考えられないからこそ、悩んでいるんだよな…
けれど、
「仕事に支障をきたすような恋愛は長続きしない。」
そのフレーズだけは、グサッと僕の心を突き刺した。
今日の僕の態度で、きっとリラの仕事の仕方は変わるだろう。
自分で作ったラブソングを、誰かに提供することを、今後は止めようと思っているかもしれない。
正真正銘、リラの仕事の支障になっているんだよな。僕は…
それに、僕にとっても。
こんな風にリラのことばかり考えて、本来の使命を果たせなかったらどうする。
さっきは道を間違えたぐらいで済んだが、もっと重要な場面でミスをすると、下手をすれば命だって落としかねない。
好きすぎるが故に、お互いがお互いの足枷になってる。
それは痛いほどわかってるんだ…
一向に煮え切らない態度の僕を、ベルモットは物珍しそうに見た。
「どんな子なの?
あなたをそこまで心酔させるカノジョ。」
「…まるで、輝く彗星、一等星。
そんな感じです」
「闇夜に暗躍する私たちとは正反対ね。
あなた、組織のこと話して無いでしょうね」
「もちろん。
自分の命より大切な子ですから
組織に関することは何一つ、話していません。」
嘘だ。
リラはもう知っている。
僕の素性も、僕がこの組織に潜入していることも。
僕がこの組織に関わるたびに、リラは心配そうな顔をして、不安を必死に押し殺して見送ってくれる。
ヒロがこの組織絡みで死んだと知ったから。
僕が言わなければ、僕を心配する時間を、歌や仕事の時間に使えたのにな。
今の僕は何を考えても、自分がリラにふさわしく無い理由ばかり探していた。
こんな気持ちになるのは、初めてだった。