【R18】 Begin Again【安室透/降谷零】
第38章 零じゃなきゃ ☆
安室side
「…バーボン?そこ、右折よ?」
「え…?あぁ。うっかりしてました」
バーボンとしてベルモットを拾って、組織のアジトに向かう途中、道を間違えた僕にベルモットは珍しいと目を丸くした。
「どうしたのよ。ボーッとするなんてらしくないわね」
「…ちょっと、嫌なことがありまして。」
「なに?女絡み?」
「…違いますよ」
その否定の仕方が僕にしては珍しく下手くそだったんだろう。
ベルモットは、フッと口角を上げて笑いながら僕を見た。
「なんだ。図星ね」
もうポーカーフェイスの作り方はとっくに忘れてしまっていた。
この今の、言いようのない気持ちが口からぽろ…とこぼれ出す。
「人は欲張りですね。
少し手に入ったと思えば、もっと欲しくなる。
全部、自分のものにしたくなる。」
同じようなこと、前に誰かが言っていた気がする。
その時、僕は何と返したかもう忘れてしまった。
「あら。珍しいわね。
あなたがそんな話をするなんて」
「このところ、自分の独占欲の強さにたまに嫌気がさしますよ」
ベルモットにリラのことをバレないようにしよう。
なんて考えていた僕だったのに、気付けば恋愛相談まがいのことをしている。
まあ、相手はどこの誰か知らないだろうし、問題は無いだろうけど。
百戦魔なんだろうベルモットは、そんな僕を嘲るように笑いながら言った。
「まあ、私は純愛なんて信じて無いけどこれだけは言えるわ。
仕事に支障をきたすような恋愛なんて、どのみち先は長く無い。
早々に見限った方がバーボン、あなたのためよ」
「…見限れたら、どんなに楽か」
「女なんて、掃いて捨てるほどいるんだから。
1人の女に固執することないわよ。」