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【R18】 Begin Again【安室透/降谷零】

第37章 ずるい




「待って零。」

「何?」

「…っ…零のために書いた曲を、他の人が歌うのは、たしかに複雑だと思うよ?
でもそれは…」


ピリリリリ…
ピリリリリ…


まるでリラの言葉を遮るように、僕のスマホが鳴った。

安室透のスマホが。

発信元はベルモットだ。


「…ちょっとすみません。
…はい?」

「バーボン?今どこ?」

「…自宅ですよ。どうかしましたか?」

「急ぎの収集。今から米花埠頭の組織のアジトで。
悪いんだけど、拾ってくれない?」

「…了解」


ピッ


電話を切った後、リラが恐る恐る僕に聞く。


「仕事…?」

「あぁ。これからちょっと行ってくる。
…降りて?」

「零…帰ったら、ちゃんと話してくれる?」

「うん…」


そう言いながら、僕は誤魔化すみたいにリラの髪を撫でた。

愛しくてたまらないはずのリラの髪。
それを撫でる藤亜蘭の姿が目に焼き付いて離れない。


リラは悲しそうに僕を見た後、ゆっくりと車から降りた。


「もしかしたら、明日そのままポアロに行くかも。
帰るのが明日の夜になると思います」

「うん…気を付けて…」

「戸締まり、しっかり頼みますね」


そう言って、サイドウインドウを閉めてアクセルを踏もうとした時、リラが咄嗟にそれを止めた。


「待って零!」

「え?」

「…キスして?」


縋るように、僕にそう言うリラ。
目を閉じて、どこにキスをするのかの選択権を僕に与えてくる。


僕は、ゆっくりとリラに顔を近づけ、頬にキスをした。


「…ほっぺ…」

「行ってきます」


悲しそうにしたリラ。
最低だな…僕は。

ただの嫉妬で、こんな風に冷たくしてしまう。

そしてサイドウインドウを閉め、アクセルを踏んで車を発進させると、バックミラー越しにリラが泣いてるのが見えた。


ごめんな…そんな顔させて

そう思いながらも、今は戻ってリラの涙を拭いてやる余裕なんてなかった。

振り切るように、車のアクセルを踏んだ僕は、闇夜にRXと共に消えた。


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