【R18】 Begin Again【安室透/降谷零】
第37章 ずるい
そんなリラに、僕はずっと言うのを我慢していたことを、つい勢いで言ってしまった。
「僕へ向けた曲を、他の男が歌うんだ」
「…え?」
思った以上に怒った声でそう言い放った僕に、リラは驚いて目を丸くする。
まずい。止まらない…
これ以上言ったらもう止まらないのは自覚している。
けれど、僕の心は黒い霧に覆われて、もうどうしようもなかった。
「あの曲、あの日僕と一緒に星を見た日に書いた曲だろ?
僕の曲なのに、リラが歌ってくれないんだ。」
「…それは…」
「他の男が歌って、こんな素敵に歌ってもらって嬉しいです。
なんて言うんだ?」
「零…」
「僕よりも、アイツの方がリラのことをわかってくれるって思ったんじゃないのか?
リラが仕事でどんなに悩んでも、僕にはどうしてやることもできないし。」
「…どうして、そんなこと言うの?」
溢れ出す気持ちを止められず、頭に浮かんだことをそのままオブラートに包みもせずにリラに投げかけた。
そんな僕に、リラが悲しそうな声で呟く。
運転中だから、顔は見れないけれどきっと、今にも泣きそうな顔をしているんだろう。
言い過ぎた。
分かっているのに、許したくない。
年上のくせにそんな子供みたいなことを思って、何も言わずにただ車を家に向かって走らせていると、気まずい空気のまま自宅マンションの駐車場に到着した。
「…着いたよ」
そう言ってシートベルトを外して、車外に出ようとする僕の袖を、リラがぎゅっと掴む。