【R18】 Begin Again【安室透/降谷零】
第37章 ずるい
心の中のモヤモヤがだんだん大きくなってくる。
あんな風にアイツに髪を撫でられるのは初めてじゃないのか?
リラって呼び捨てに呼ばれて、違和感を何も感じていないのか?
不仲なんて、嘘じゃないか。
僕には、お互い信頼し合ってる良きパートナーに見えた。
「じゃあ、わたしたちも帰ろう?」
「…」
「?零??」
「…え?何?」
「帰ろう?」
「あぁ…うん。そうだな。」
半分上の空でそう返事をして、僕たちは微妙な空気のまま駐車場に停めてあったRX-7に乗り込んだ。
リラの顔がまともに見れない。
もしも今、リラの目を真っ直ぐに見て、僕の事を好きなリラがいなくなっていたらどうしよう。
そんな少しの恐怖心と、未だに胸を覆う黒いモヤ。
そんな様子のおかしい僕を心配して、リラが助手席から僕の顔を覗き込む。
「零?どうしたの?
…やっぱり、疲れちゃった?」
「いや…?別にそう言うわけでは」
「さっきから、なんか上の空で…
どうしてわたしの目を見てくれないの?」
「見てますよ。ちゃんと」
「見てないよ。今だって」
「今は運転中だから」
気を抜くと、リラが傷付くような事を言ってしまいそうだったから、必死に取り繕ってはぐらかす僕。
僕の悪い癖だ。
そんな癖をもう見抜いているリラは、少しだけ不満げに口を尖らせた。
「…はぐらかされた」
そんな風に今度はリラが頬を膨らませている。