【R18】 Begin Again【安室透/降谷零】
第37章 ずるい
言い返そうとするリラから楽譜を取り上げ、藤亜蘭はその楽譜にペンでマークをつけながら言う。
「ここでブレスを入れろ。
そしたら、だいぶ歌いやすくなるだろ。」
「…ここで…
思いつかなかった…なるほど」
そんな、的確なアドバイスをされて我に返ったのか、リラはストンとそばにあった椅子に座った。
「それと、お前メシ食ってるのか?
腹から声、出てない」
「…今日はゼリー食べて来ました」
「バカ。ちょっとだけでも腹に入れとけよ…
ほら。これ食ってそこのブレスの練習してろよ。
お前が喉休めてる間、俺のソロを先に録るから」
そう言って藤亜蘭はリラにカロリーメイトを手渡すが、リラは食べようとしない。
「…体型維持するために、間食で糖質を極力摂らないようにしてて…」
そんなリラに、痺れを切らした藤亜蘭がまるで親のように叱る。
「俺たちはプロだ。
客は金を払って俺たちの楽曲を聴く。
今や無料で聴く方法なんかいくらでもあるのにも関わらずだ。
自分のプライドなんかへし折れよ。
良いものを提供するためにはどうすればいいかだけ考えろ」
「…」
「俺が録ってる間、腹にそれ入れて、喉ちゃんと休めろ。」
そう言って、藤亜蘭はリラの頭をぐしゃぐしゃっと撫でた後、レコーディングブースに入って行った。
嫌な予感がした。