【R18】 Begin Again【安室透/降谷零】
第37章 ずるい
「もう。零だって、暇じゃないのに」
「ははっ。いいよ。
僕もリラに近しい人とは仲良くしてもらいたいし。
それに、藤亜蘭さん?どんな人か見てみたいしね。」
「この間テレビで見たでしょ?
ベッドルームで…プロジェクターで…」
そこまで言うと不意に思い出して顔が真っ赤になった。
あの日、藤さんが出ている音楽バラエティ番組を見ながら、ベッドで零に無茶苦茶に抱かれたこと。
あの3日後に藤さんと打ち合わせした時、わたしそのことばかり思い出して全然仕事にならなかったんだから。
そう思っていると、零は意地悪に微笑みながらわたしを見つめた。
「何考えていたんですか?」
「えっ!」
「あの日の僕との時間?」
「…っ!…恥ずかしいから言わないでよ…」
ぼっと顔を赤くしながら俯くと、わたしを揶揄って満足した零は笑いながら両手を合わせてごちそうさまをした。
「まあ藤亜蘭がどんな人か見たいって言うのは冗談で、本当はリラの歌を久しぶりに聴きたいからです」
「いつも歌ってるじゃないー」
「そうなんだけど、なんて言うか…
本気で歌うリラが見たい」
まあそうか。
家で歌うのって、鼻歌や曲を書きながらもハミング。
ちゃんと冒頭から最後まで全力で歌う姿を零に生で見てもらうのはいつぶりだろう。
そう思うと、わたしも少し楽しみだ。
「じゃあ明日、スタジオまで乗せてってくれる?」
「もちろん。
リラの運転手復活?」
「うん!1日だけの復活!」
出会った頃は、ストーカー被害に遭っていたわたしの護衛で、よく零が送り迎えしてくれたな…
あの時はまさか零とこんな関係になるなんて思ってなかった。
零の顔をじっと見ると、零の目がわたしの視線に重なった。
大好きな瞳。
わたしは零が好きで、零もわたしが好きで
それだけで、大抵のことは乗り越えられるって思ってた。
ただ好きなだけで、なんでも上手く行くと思ってたの。
この時は。