【R18】 Begin Again【安室透/降谷零】
第5章 背中に触れた時
目を閉じた安室さんは、綺麗だ。
見惚れて思わず音を外しそうになり、わたしは慌ててギターを弾く手に集中した。
曲が終わると、安室さんが拍手をしながら口を開く。
「前から思ってたんですが、英語の発音、綺麗ですね」
「あぁ…母と兄が、今イギリスに住んでるの。
だからたまに、電話越しに発音チェックしてもらったりしてる。」
「へぇ…ご家族が…君は、ついていかなかったんですか?」
「うん。15の時にデビューしたから、そのときはもう仕事してたし。
…それに、わたしがいない方が2人も気を遣わなくていいし」
「…それは、どういう?」
安室さんに少し突っ込んで聞かれたけれど、わたしは思わずはぐらかした。
どうして、母と兄はわたしがいない方が気を遣わないのか。
そんなこと、安室さんにわざわざ話すようなことじゃないし、何より言いたくなかった。
安室さんには、わたしの輝いてる部分だけ見ていて欲しかったから。
「…なんか、眠くなってきちゃった。
そろそろ寝よう?」
そう言ってあからさまにはぐらかすと、安室さんはそれ以上聞いてこない。
「…ですね。歌ってくれて、ありがとうございました」
そう言いながら安室さんは優しく微笑んで、わたしの頭を撫でた。
安室さんは、優しい。
優しすぎて、思わず自分は特別だと勘違いしてしまいそうになる。
こんな風に頭を撫でるのも、きっとわたしだけじゃないのに、思わず熱くなった頬を両手で冷やした。