【R18】 Begin Again【安室透/降谷零】
第5章 背中に触れた時
帰宅すると、安室さんがご飯を作ってくれた。
わたしが糖質を摂取できないから、配慮して低糖質のおかずに玄米。
「ありがとう」
「ああ、料理は好きなんでこれくらいは」
「それもあるけど、わざわざわたしに合わせて作ってくれて…」
そう言いながら安室さんが作ってくれたご飯を口に運ぶと、お腹の中からじわっと幸せになれるような味がした。
安室さんはにこっと笑いながら言う。
「…じゃあ、お返しに、寝る前に歌を歌ってください」
「うん。リクエスト、ありますか?」
「リラの好きな曲が聴きたいな」
「りょうかい!」
お礼に歌をプレゼントするのが、すっかり恒例になっている。
わたしの歌を好きだと言ってくれる安室さん。
そんな彼に歌っていると、いつもステージで歌っているのとはまた少し違う気持ちになる。
ステージで歌うときは、言いようのない高揚感と、幸福感に満たされる。
安室さんの前で歌うときは、物凄く緊張する。
安室さんの目が、わたしの必死に隠してる弱さを貫いてきそうで。
シャワーを浴びて、ベッドに入る前にギターを持った。
わたしの好きな曲のひとつ
CarpentersのTop of the world
小学生の頃、母が好きでよく聴いていた。
わたしがギターを弾くきっかけになった曲。
初めて最初から最後まで弾き語りできたとき、すごく嬉しかったのを覚えてる。
時折、歌いながら安室さんを見ると、目を閉じてじっとわたしの歌とギターに耳を澄ましていた。