【R18】 Begin Again【安室透/降谷零】
第36章 ドS男の過去 ☆
1時間ほど車を走らせ、わたしの自宅へ到着した。
「じゃあ、歌詞できたらメールで共有してくれ。」
「了解です!」
「じゃあな。Lila」
「あ!藤さん!!」
「ん?」
サイドミラーを上げて車を走らせようとした藤さんを思わず呼び止めたわたしは、藤さんに言った。
「絶対、いい音楽つくりましょうね!
チャート全部独占しちゃいましょう!
なんなら紅白だって、ソロとユニット両方で出られるように!」
「…ふ。そうだな」
「じゃあ、お疲れ様でした!」
「待った。」
また、藤さんが笑った。
そして、満足してその場を立ち去ろうとするわたしを、今度は藤さんが呼び止める。
「はい?」
「あんたのこと、嫌いって言ったの撤回するわ。」
「あぁ、それはさっき謝ってもらいましたよ!」
「…嫌いじゃないよ。あんたのこと。
じゃ、また連絡する」
そう言い残し、藤さんの運転するマセラティはマネージャーさん宅へと走り去って行った。
良かった…最初はどうなることかと思ったけど、藤さんとのバチバチは今日で溶けたみたいだ。
よし。あとはデュエット曲の歌詞を書くぞ!
そう意気込んで、わたしは零の待つ自宅へと足速に向かった。
自宅の玄関ドアを開けると、アヒージョの良い匂いが漂う。
リビングに入ると、そこから見えるキッチンに大好きな零が立っていた。
「おかえり。リラ」
「零ーー!!」
ぴゅーっと零の方へ走り、そのまま彼の身体にぎゅーっと抱き着いた。
「なに?どうした?ご機嫌だな」
「ふふっ。零と久しぶりにイチャイチャ出来るから嬉しくて」
「そんな可愛いこと言って。
本当は?仕事で何かいいことあった?」
抱きつくわたしの髪を撫でながら、零は頬にキスをした。
「ん。
あのね、藤さんにね、あんたのこと嫌いじゃないって言われた!」
「…え?」
「仲直りしたの!
良かったあ!コラボリリース前に雪溶け!」
「へ、へえ…」
「あ、じゃあわたし部屋着に着替えてくるね!」
何だ言いたげな零から身体を離し、わたしは上機嫌で寝室へとスキップして向かった。