【R18】 Begin Again【安室透/降谷零】
第36章 ドS男の過去 ☆
そんな話をしながら、藤さんの自宅の玄関まで荷物を運んだわたしたち。
さすがに、家の中まで足を踏み入れる勇気はなく、藤さんがマネージャーさんに渡すものを取ってくる間、玄関の前で待っていた。
「悪いな。じゃあ行くか」
「はい!」
「…カレシ、飯作って待ってるんだろ?
遅くなってごめんと謝っとけよ」
「零は、そんなことで怒らないから。
きっと帰ったら、おかえりって優しく迎えてくれます。」
零のことを話す時は自然と顔が綻ぶ。
わたしの表情がよっぽど惚気て見えたんだろう。
藤さんは呆れた顔して言った。
「…幸せそうだな」
「はい!今まで生きてきた中で今が一番幸せ!
…あ。でも…そうでもないかな…」
「だから、変な気を使うなって。」
慌てて幸せアピールを取り戻そうとそうでもないかな?なんて言ってみたけど、すぐにバレた。
仕方ない。
零と一緒にいて、幸せすぎてもう世界中の人に言って回りたいぐらいなんだから。
マンションのロビーから駐車場に向かう途中、藤さんが床を指差して言った。
「ここ、段差あるから気をつけて」
「えっ?わっ…」
気を付けて。と言われた時には時すでに遅く、わたしはその段差に躓いて大きくバランスを崩した。
そして、藤さんの身体にわたしの身体がポスッと倒れ込む。
零とは違う匂いに、わたしは一瞬で藤さんから身体を離した。
「ごっ、ごめんなさい」
「別にいいけど。」
こんなとこ、藤さんのファンに見られたらSNSにボロカスに書かれるだろうな…
気をつけなきゃ…
そんなことを思いながら、わたしはまた藤さんの車の助手席に座った。