【R18】 Begin Again【安室透/降谷零】
第36章 ドS男の過去 ☆
藤さんは、今も悲しい呪縛の中にいるんだ…
今度は昔の自分と重ねてじっと藤さんを見ると、わたしの悲しそうな視線に気づいて、綺麗な顔を少しだけ崩して笑った。
「あんたがそんな顔する必要ないから。」
そう言ってわたしの頭をくしゃっと撫でた藤さん。
今度はそんな藤さんのスマホが鳴った。
彼は、車に備え付けられたスピーカーで運転をしながらその電話を取った。
「はい?」
カーステレオから、受話器の音が聞こえる。
どうやら電話の相手はマネージャーさんのようだ。
「あ!藤?悪いんだけど、藤の家に忘れていった資料、今日持ってきてもらえない?」
「はー?今Lilaの家に向かって走ってるんだって。
そのあとお前んち行こうと思ってたのに、俺の家逆方向なんだけど」
「そうよね…」
つまり、距離的に藤さんの家、わたしの家、マネージャーさんの家 という順番で離れているらしい。
そう理解したわたしは、乗せてもらっているわけだし…と、藤さんに提案をした。
「あ、あの。藤さんちに寄ってからわたしを降ろしたらどうですか?
わたし、別に急いでないんで」
「…仕方ないな。そうするか」
ため息をついた藤さんは、ブレーキを踏むと交差点を左折。
ひょんなことから藤さんの自宅に寄ってからわたしの家へと向かう進路変更がなされた。