【R18】 Begin Again【安室透/降谷零】
第36章 ドS男の過去 ☆
その恋人と同棲もしてたみたいだし…
完全にその地雷を踏んでるわたし!
「あっ!でも、同棲もいいことばかりじゃないですよー!」
そんなわたしの取り繕った気遣いは、藤さんに一瞬で一蹴される。
「嘘つけ。
幸せでたまらないって顔してるぜ?」
「う…バレましたか…」
「ま、いいんじゃないの?
…俺もそうだったし。」
車内をシーーンとした静寂が包む。
藤さんの顔をチラッと横目で見ると、悲しそうな切なそうな目で前を見ていた。
まるで、初めて会ったときの安室さんみたいだ。
安室さんも、こんな目をしていた。
「藤さんは、前の彼女のことまだ好きなんですか?」
思ったことが口を突いて出てきた。
しまった。これは完全にデリカシーのない質問…
そう思っていると、藤さんも呆れたように言う。
「あんた。デリカシーのカケラもねぇな。
誰から聞いたんだよ。」
「…藤さんのマネージャーさんから…」
「おしゃべりなやつ。
好きなわけないだろ。もういないし。
…あれから、人のことを好きになったことは一度もない。
恋愛感情のみならず、友情もな。
人として好きっていう感情を忘れたよ」
「…そんな、悲しいこと言わないでください。」
人のことを好きになれない。
そんな悲しいこと言わないでって言ったものの、何だか少しわかる気がする。
わたしも、小さい頃はそうだったから。
あの事件があってから、しばらく人を信じたり、愛したりするのが怖かった。
恋人に向ける愛のみならず、友情の愛も、家族愛も。
すべて、怖かった。