【R18】 Begin Again【安室透/降谷零】
第36章 ドS男の過去 ☆
車に乗った時、零から電話がかかって来た。
すぐに電話を取ろうとしたけれど、仕事仲間の車に乗せてもらっているところだし、ちょっと躊躇いが生じる。
「出なよ」
「あ、はい。じゃあ、失礼します。」
わたしが電話を取らないでいると、藤さんが気を遣ってそう言ってくれ、わたしは会釈をしながら通話ボタンをタップした。
「もしもし?今帰ってるところだよ。
どうしたの?」
「忙しいのにごめん。
ホットプレートのたこ焼きプレートって、どこにしまったかわかる?
アヒージョを作ろうと思ったんだけど、引っ越してから一度も使っていないから見つからなくて」
「あ、ごめん。
キッチンの一番上の棚の奥にしまい込んじゃった」
「…本当だ。
助かったよ。ありがとう。
気をつけて帰ってきて」
「うん。じゃあ、また後でね」
ピッ…
今日はアヒージョか…!
楽しみだなあー!
食べた後、匂いが残らないようにマンションの下のコンビニでブレスケア買わなくちゃ。
今日は久しぶりに零とイチャイチャして眠れる日だ。
最近仕事が忙しくて、わたしが帰る時間は深夜になることが多かった。
零は必ず起きて待っていてくれるけど、流石にそこからは大人しく零の腕枕で眠るしかなく。
はしたないけれど、わたしは欲求不満だ。ものすごく。
ふふっと帰ってからの零との時間が楽しみすぎて笑みをこぼすと、その様子を見て藤さんが言った。
「カレシ?同棲してんの?」
「あ、はい。まあ…」
しまった…
藤さんにとっては、この類の話はNGだ。
あのマネージャーさんの話が本当なら、結婚しようとしてた恋人に裏切られ、さらに信頼していたバンドメンバーにも裏切られたんだもん…