【R18】 Begin Again【安室透/降谷零】
第36章 ドS男の過去 ☆
ピリピリした空気の中、藤さんとの打ち合わせは終了した。
「とりあえず、俺のソロはこれでOK。
あんたのソロももう渡してある。
後は2人で歌う一曲目だな。
歌詞、書けそうか?」
「たぶん…なんとか」
絶対ラブソングになってしまうけど…と、心の中で謝りながらしゅんと下を向くと、藤さんはふうっとため息をついて言った。
「…悪かったよ」
「へ?」
「この間、あんたのこと嫌いって言ったの、言いすぎたわ。
…あの日、機嫌悪くて。」
恐らく、わたしが完全に藤さんに萎縮していることがバレたんだろう。
流石にこのままじゃコラボ自体に支障が出ると踏んだのか、藤さんは大人しくわたしに謝罪してきた。
「い、いえ。全然…
わたしもお茶を思いっきりぶっかけてしまったし…」
「あぁ。俺にお茶ぶっかけて来たの、あんたが初めて」
そう言って藤さんは、わたしに初めて笑顔を見せた。
いつも優しい笑顔を見せてくれる零とは正反対だな…
これが、いわゆるツンデレというやつなのか。
「…ほら、今日はもう帰るぞ。送ってやるから」
「あっ!ハイ!」
笑顔を見せたと思えば一転。
またクールな仏頂図で車のキーをクルクルと回す藤さん。
わたしはその後ろをパタパタと走ってついて行った。
藤さんの愛車、赤いマセラティ グラントゥーリズモの助手席に座ると、何だか緊張した。
初めて、零のRXに乗せてもらった時は今よりもっとドキドキしたことを思い出す。
今やまるで自分の家のようにくつろげるあの助手席。
他の人の車に乗るとそれがより実感できて嬉しい。